招福来猫BOOTH店招福来猫BOOTH店

【創作BL小説】吸血鬼は青年を伴侶に選ぶ【短編集】

廃神社で眠る吸血鬼×平凡元気青年の和風ファンタジーをメインとしたBL小説短編集。A5カバー付き/86P 書き下ろしは攻めがちいさくなるお話です。 頒布イベント【文学フリマ京都】 webカタログはこちら。【入場ともに無料】↓ https://c.bunfree.net/c/kyoto07/!/%E3%81%8B/34 【収録作品一覧】 ・「永遠の別れアンソロジー」に寄稿した「鬼神と花嫁」を改題。  +書下ろし短編「ちいさくなった鬼神」 ・「彼の執着はだれのもの?」(義父×養子) ・ 短編×6話。 【お試し読み】 「東山にある神社には近づいちゃいけないよ。人の血を吸う恐ろしい神様がいて、入ると食べられてしまうから」  薪を取りに東山へ向かったとき、昔じいさまにいわれた忠告を思い出した。  見渡す限り山が広がる故郷。ここはわずかな平地を畑にして暮らすような寒村だ。十年前に親をなくし、成人を控えた今は田んぼを耕して暮らしている。俺のいる西山には薪になるような枝振りの木が少ないから、東山の奥まで採りに行っている。 「神様、か。東山は崖が多いから、子供に忠告するために大袈裟に言ってたんだろうな」  独りごちて、東山の裾野にある神社の前を通り過ぎる。鳥居には風雨に晒され神社名がかすれて見えた。  鬼ノ神神社。  昔は大きな社だったのだろうが、今はだだっ広い拝殿とそれから伸びる小さな社(やしろ)のどれにも手入れされたようすがない。  くすんだ色の壁板に、落ち葉だらけの賽銭箱。時折風の音がヒュウ……と聞こえてくる。「血を吸う恐ろしい神様」がいる気がして、薄ら寒くなる。 「気味が悪い。さっさと薪を取って帰ろう」  もうすぐ冬がやってくるから、薪はありすぎても困ることはない。背負えるだけ背負って山を降りようとしたとき、大粒の雨が降ってきて、あっという間に薪もろとも濡れ鼠になってしまった。 「下着までビシャビシャだ。どこか屋根のある場所……」  屋根といえば、来るときに通った神社しかない。とにかく雨がしのげたらいい。賽銭箱の向こうにある格子の引き戸をそっと開ける。 「この感じじゃ無人だろうし、雨宿りさせて貰おう。いくら恐ろしいと言っても神様だ、問答無用で祟り殺されたりはしないだろう」  拝殿の中はほこり臭く薄暗い。長年手入れされていないのがよく分かる。  さすがに神様が住まう奥の間に入るのは気が引けて、格子扉のすぐそばに体をもたれかけているうち、気を失うように眠ってしまった。  なんだか温かい。猫でもくっついてるような温度だ。  もしかしたら、知らないあいだに家に帰ってきたのかもしれない。 「ん……」 「起きたか」  気付けば、宝石みたいな薄青の瞳をした青年に抱きかかえられていた。透けるような白い肌が、暗い室内で発光しているように見える。俺の勘違いだろうけど。 「この山は夕暮れになると急に冷える。濡れたままでは死んでしまうぞ」 「へっ……? あ、あんただれだ!?」 「俺はシュリ。以前は鬼神(おにがみ)と呼ばれていた。もっとも、今は参拝する者もいないようだがな」  鬼神。  その言葉で、ここは廃墟みたいな神社で、今は夢を見ているんじゃないんだと我に返った。 「あ、暖めてくれてありがとう。もう雨はやんだみたいだし、家に帰る。世話になった!」  男の腕から抜けようとしたが、再び捕らえられる。 「待て。長い間待ち望んでいた生贄が自ら飛び込んできたんだ。それに、お前のお陰で長い眠りから目覚めた、詫び代わりに食わせろ」 「俺は生贄なんかじゃない……っ」  グイ、と着物の袷に手を入れて肩をはだけられた。襦袢も一緒に剥かれたせいで、上半身裸の姿で床に押しつけられる。 「なんだ、男か? 女みたいな顔をしているからそうだとばかり思っていた。……まあいい、顔は好みだし生身の人間に会うのも久々だ。存分に愉しませてもらうぞ」  同じ世界のものとは思えない美貌が近づいてくると思ったら、唇を吸われていた。きっと、柔らかい顔あたりから食べるつもりなのだろう。 「んんっ!!」  バタバタと足を動かすが、シュリの片脚で軽く封じられてしまう。鬼というだけあってかなり大柄だ。 「大人しくしろ。怖くないように食べてやるから安心しろ」 「だれが食べられるか……!」  睨むがもう一度口付けられ、舌を絡められる。こんなこと、村のだれともしたことない。  唇を外したいのに、後頭部を押さえつけれているせいで身動きが取れない。飲みきれなかった唾液が口の端から垂れてゆく。 「……ふぁっ」  急に口付けが終わり、ケホケホと咽せた。他人の唾液というのは甘いんだ、と命の危機なのに変に感心してしまった。  が、急に体の自由が効かなくなってきた。指は力が入らないし、手足に鉛の重りを付けられているようだ。 「鬼神、俺になにをした?」 「俺の唾液には動物の動きを麻痺させる成分がある。知らなかったのか」  ペロリと舌なめずりをしたシュリの手が脚のあいだの性器に伸びてきた。 【お試し読みここまで】

廃神社で眠る吸血鬼×平凡元気青年の和風ファンタジーをメインとしたBL小説短編集。A5カバー付き/86P 書き下ろしは攻めがちいさくなるお話です。 頒布イベント【文学フリマ京都】 webカタログはこちら。【入場ともに無料】↓ https://c.bunfree.net/c/kyoto07/!/%E3%81%8B/34 【収録作品一覧】 ・「永遠の別れアンソロジー」に寄稿した「鬼神と花嫁」を改題。  +書下ろし短編「ちいさくなった鬼神」 ・「彼の執着はだれのもの?」(義父×養子) ・ 短編×6話。 【お試し読み】 「東山にある神社には近づいちゃいけないよ。人の血を吸う恐ろしい神様がいて、入ると食べられてしまうから」  薪を取りに東山へ向かったとき、昔じいさまにいわれた忠告を思い出した。  見渡す限り山が広がる故郷。ここはわずかな平地を畑にして暮らすような寒村だ。十年前に親をなくし、成人を控えた今は田んぼを耕して暮らしている。俺のいる西山には薪になるような枝振りの木が少ないから、東山の奥まで採りに行っている。 「神様、か。東山は崖が多いから、子供に忠告するために大袈裟に言ってたんだろうな」  独りごちて、東山の裾野にある神社の前を通り過ぎる。鳥居には風雨に晒され神社名がかすれて見えた。  鬼ノ神神社。  昔は大きな社だったのだろうが、今はだだっ広い拝殿とそれから伸びる小さな社(やしろ)のどれにも手入れされたようすがない。  くすんだ色の壁板に、落ち葉だらけの賽銭箱。時折風の音がヒュウ……と聞こえてくる。「血を吸う恐ろしい神様」がいる気がして、薄ら寒くなる。 「気味が悪い。さっさと薪を取って帰ろう」  もうすぐ冬がやってくるから、薪はありすぎても困ることはない。背負えるだけ背負って山を降りようとしたとき、大粒の雨が降ってきて、あっという間に薪もろとも濡れ鼠になってしまった。 「下着までビシャビシャだ。どこか屋根のある場所……」  屋根といえば、来るときに通った神社しかない。とにかく雨がしのげたらいい。賽銭箱の向こうにある格子の引き戸をそっと開ける。 「この感じじゃ無人だろうし、雨宿りさせて貰おう。いくら恐ろしいと言っても神様だ、問答無用で祟り殺されたりはしないだろう」  拝殿の中はほこり臭く薄暗い。長年手入れされていないのがよく分かる。  さすがに神様が住まう奥の間に入るのは気が引けて、格子扉のすぐそばに体をもたれかけているうち、気を失うように眠ってしまった。  なんだか温かい。猫でもくっついてるような温度だ。  もしかしたら、知らないあいだに家に帰ってきたのかもしれない。 「ん……」 「起きたか」  気付けば、宝石みたいな薄青の瞳をした青年に抱きかかえられていた。透けるような白い肌が、暗い室内で発光しているように見える。俺の勘違いだろうけど。 「この山は夕暮れになると急に冷える。濡れたままでは死んでしまうぞ」 「へっ……? あ、あんただれだ!?」 「俺はシュリ。以前は鬼神(おにがみ)と呼ばれていた。もっとも、今は参拝する者もいないようだがな」  鬼神。  その言葉で、ここは廃墟みたいな神社で、今は夢を見ているんじゃないんだと我に返った。 「あ、暖めてくれてありがとう。もう雨はやんだみたいだし、家に帰る。世話になった!」  男の腕から抜けようとしたが、再び捕らえられる。 「待て。長い間待ち望んでいた生贄が自ら飛び込んできたんだ。それに、お前のお陰で長い眠りから目覚めた、詫び代わりに食わせろ」 「俺は生贄なんかじゃない……っ」  グイ、と着物の袷に手を入れて肩をはだけられた。襦袢も一緒に剥かれたせいで、上半身裸の姿で床に押しつけられる。 「なんだ、男か? 女みたいな顔をしているからそうだとばかり思っていた。……まあいい、顔は好みだし生身の人間に会うのも久々だ。存分に愉しませてもらうぞ」  同じ世界のものとは思えない美貌が近づいてくると思ったら、唇を吸われていた。きっと、柔らかい顔あたりから食べるつもりなのだろう。 「んんっ!!」  バタバタと足を動かすが、シュリの片脚で軽く封じられてしまう。鬼というだけあってかなり大柄だ。 「大人しくしろ。怖くないように食べてやるから安心しろ」 「だれが食べられるか……!」  睨むがもう一度口付けられ、舌を絡められる。こんなこと、村のだれともしたことない。  唇を外したいのに、後頭部を押さえつけれているせいで身動きが取れない。飲みきれなかった唾液が口の端から垂れてゆく。 「……ふぁっ」  急に口付けが終わり、ケホケホと咽せた。他人の唾液というのは甘いんだ、と命の危機なのに変に感心してしまった。  が、急に体の自由が効かなくなってきた。指は力が入らないし、手足に鉛の重りを付けられているようだ。 「鬼神、俺になにをした?」 「俺の唾液には動物の動きを麻痺させる成分がある。知らなかったのか」  ペロリと舌なめずりをしたシュリの手が脚のあいだの性器に伸びてきた。 【お試し読みここまで】